次の文章Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを読んであとの問いに答えなさい。A、B、C、Dから最も適当なものを一つ選んで、解答カードに書きなさい。
文章Ⅰ
私たちは欲望のかたまりです。そして、欲望は膨張をつづける宇宙のように限りがありません。
こんな話(1)を想像してみましょう。ある中学生がお父さんやお母さんから毎月もらうお小遣いが、今までの2000円から一気に20万円になったらどうするでしょうか?彼の欲望はとどまるところを知らず、前からほしいと思っていたものを全部手に入れようと、お小遣いを持ってお店に飛んでいく(2)にちがいありません。
(中略)
しかし、地球上の子供たちが全員、20万円もお小遣いをもらって、好きなものを買うとしましょう。そんなことは可能でしょうか。
欲望が無限にあるのは、じつは大人だって同じです。大人も買いたいものを何でも買うとしたらどうでしょうか。でも、そんなことはしようと思ってもできっこない(3)話なのです。なぜかというと、地球上に存在する全工場をフル稼働しても、無限にたくさんのものをつくることはできません。人間の技術はまだそこまで進んではいません。(4)
労働者の数だって限られています。機械設備も限られています。農産物を作るにも、農地には限りがあります。みんなが大きな家に住みたくても住めない(5)のは、土地が足りないというだけでなく、そんなことをすればたちまち、地球上の森林から木が切り出されて、あっという間に地球は丸裸になってしまうからです。
つまり、最も大事なことは、私たちの欲望は無限だけれど、工場や機械設備、労働力、森林、農地、住宅地、石油など、商品を生産するための経済資源は有限だということです。経済資源は有限だから、私たちの欲望のうち、つまりほしいもののうち、一部分しか手に入らないのです。別の言い方をすると、経済資源が有限なので生産されるものも有限ということになります。だから、私たちの手に入る「所得」も有限。すなわち、商品を買うための予算も有限ということになります。
このこと(6)を説明するのに、経済学では「稀少性」(Scarcity)という言葉を使います。「稀少性」とは、人間の欲望をすべて満足させるだけの経済資源は地球上には存在しないという厳しい現実を示すじつに簡潔な言葉です。
稀少な経済資源を使って、人間の生活をどうやって豊かにすることができるのか。このことこそ、経済学の最も大きな目標です。
(注)フル稼働(フルかどう):性能いっぱいにすべてを休みなく動かすこと
問1 「こんな話」とは、どんな内容の話か。
A 人間の欲望は宇宙と同じだという話
B 人間は欲望のかたまりであるという話
C 小遣いをたくさんもらいすぎて困った話
D 中学生の1ヵ月にもらう小遣いが増える話
問2 「お店に飛んでいく」とあるが、どうするつもりか。
A 欲しいものを全部買うつもりだ。 B お店のものを全部買うつもりだ。
C 友だちより早く行くつもりだ。 D 大人より早く行くつもりだ。
問3「そんなことはしようと思ってもできっこない」とは、どのような意味 か。
A 20万円で欲しいものを何でも買うことができるわけがない。
B 大人でもほしいものが何でも買えるということはあり得ない。
C 大人は欲しいものを自由に買うお金をもらうわけにはいかない。
D 子供ならできるが、大人は20万円では欲しいものが買えない。
問4「人間の技術はまだそこまで進んではいません」とあるが「そこまで」とは何を指しているか。
A 人間の欲望をおさえること
B ものを限りなく作り出すこと
C ものを早く安く作り出すこと
D 世界中の工場を一斉に動かすこと
問5 「みんなが大きな家に住みたくても住めない」とあるが、それはなぜか。
A 土地が足りない上に、家を建てる労働者の数や機械設備も十分にはないから。
B 土地が足りないというよりむしろ、家を建てる木そのものが不足しているか ら。
C土地が足りない上に、みんなが大きな家を建てたら、材料の木もなくなるから。
D土地が足りないというよりむしろ、農産物をつくる農地をつぶすことになるから。
問6 「このこと」とは何か。
A 経済資源が限られているから、物を作り出す工場や農地も不足しているということ
B 経済資源が限られているから、欲しいものをすべて手に入れることはできないという こと
C 人間の欲望は限られているから、欲しいものをすべて手には入れようとは思わないということ
D 人間の欲望は限られているから、ものを作り出す工場や農地も無限に必要ではないということ
問7 筆者によると、経済学とはどのような学問か。
A 有限な経済資源を無限にして人間の欲望を満足させる方法を考える学問
B 人間の欲望が有限であることを「稀少性」という見方から考える学問
C 限られた経済資源を有効に使って生活を豊かにする方法を考える学問
D 限られた資源から何を優先させて生産したら経済的かを考える学問
(参考答案:文章Ⅰ 1 D
文章Ⅱ
数学に関してぜひとも言っておきたいことがあります。
数学が嫌いな人が多い理由の一つは、数学はできるかできないかがはっきりしているためです。できないとどうしても嫌いになるのです。そこで、ぼくがどうやって数学を勉強してか、それについて話をします。
ぼくは、14歳のとき、夏休みにずっと親の別荘にいて、昼間ずっと数学の問題を解いていました。数学の分厚い問題集の中の問題を解く。①これはけっして日本人ができないことではありません。ただし、日本人の多くの学生は、問題をちょっとだけ考えて、すぐできればいいけれども、できないかったらすぐに解答のページをめくって「ああ、なるほど」と納得して、つぎの問題に移るのです。②これではダメです。(中略)それでは頭の中に残りません。自分にとっては、どちらかというと失敗の体験なのです。問題はとけなかった。解答を見てわかったけれども、解かなかったのです。
ぼくはそうではありませんでした。ぼくは問題は自分の力で解くべきだと考えて、それを断固実行したのです。5分や10分でできた問題もあれば、30分も1時間もかかった問題もよくありました。1時間でもできない問題の場合には、ぼくはベッドの下の引き出しに入りました。横になってふたを下ろすと、まったく暗闇の中です。その身動きができない状態で数学の問題を考えたのです。
ぼくは、問題が解けない限り、ここから出ないと決心しました。頭の中では数学の問題をずっと考えて、そして結局、解けたのです。さもなければ、いまごろはミイラになっているでしょう。
③そんな悠長なことはしていられない。自分が一つの問題を5時間も考えているうちに、外のひとは20問も答がわかlてしまう。それでいいのだろうかと思う人がいるでしょう。でもちがうのです。
「問題を自分の力だけで解いてしまうことができた。やった!」と、大きな喜びを感じられます。そして、数学にもっと興味がわいてくるのです。数学はおもしろいな、楽しいなと思えるのです。かんたんな問題でもいい。それを自分の力で解くことによって、興味がつぎつぎにわいてくるものです。それはポジティブな記憶になります。ポジティブな記憶は、頭の中に残るのです。
逆に、解答を見て20問がわかったとしても、「結局できなかった」と虚しさが残るだけなのです。この記憶はネガティブな記憶ですから、脳が忘れてしまうのです。
このように、ポジティブな記憶を残していくこと、そのためにいろいろな方法を自分なりに考えてください。そして実行してみて、自分に合わないとわかれば、別の方法を探せばいいのです。ぼくのとった方法もぜひ参考にしてみてください。
(ピーター•フランクル『ピーター流らくらく学習術』による)
(注1) ページをめくる:ページをあける
(注2) 断固:何があっても絶対に
(注3) 暗闇:真暗なところ
(注4) ミイラ:人間や動物の死体が乾いて固まったもの
(注5) 悠長な:のんびりした
(注6) ポジティブ:積極的、肯定的
(注7) 虚しさ:満足感がないこと
(注8) ネガティブ:否定的
問1 筆者は、数学が嫌いな人が多いのはなぜだと言っているか。
1 できるまでに長い時間がかかるから
2 できてもできなくてもかまわないから
3 できるかできないかのどちら化だから
4 できるかできないかがよくわからないから
問2 ①「これ」とはどのようなことか。
1 夏休みに昼間ずっと親の別荘にいること
2 数学の問題集にある問題を解いていくこと
3 数学の問題をちょっと考えてすぐ解いてしまうこと
4 親と一緒に数学の分厚い問題集のなかの問題を解くこと
問3 ②「これではダメです」とあるが、どうしてダメですか。
1 問題が多すぎて頭の中に残らないから
2 解答を見ても納得できず、解かなかったから
3 問題が解けなかったという失敗の体験になるから
4 解答をみて解き方が失敗だということがわかったから
問題4 ③「そんな悠長なこと」とはどんなことか。
1 5分や10分でできる問題をたくさん解くこと
2 問題が解けるまでずっと何時間も考えつづけること
3 ベッドの引き出しの中で身動きもせず横たわっていること
4 解答のページをめくって、わからない問題の答えを調べること
問題5 記憶について、筆者が述べていることと合っているものはどれか
1 ネガティブな記憶は、頭の中に長くとどまらない。
2 ポジティブな記憶は、ネガティブな記憶ほど残らない。
3 ネガティブな記憶は、いやな体験として長く記憶される。
4 ポジティブな記憶は、長い時間をかけて初めて得られる。
問題6 この文章で筆者が言いたいぉとはどれか
1 数学は時間がかかっても数多く問題を解くことにより、興味がわいてくる。
2 数学は、簡単な問題から解き始めることにより、楽しくなり興味がわいてくる。
3 数学は、時間がかかっても自分の力で問題を解くことにより、興味がわいてくる。
4 数学は、解答を見て解き方を納得することにより、理解が深まり興味がわ いてくる。
[参考答案:文章Ⅱ 問題1(3) 2(2) 3(3) 4(2) 5(1) 6(3)]
文章Ⅲ
フリーターがふえている。200万人にちかい、ともいわれる。それでもたいした社会問題にならないのは、フリーターという呼び名だからである。けっして失業者とよばれない。1999年現在、15歳から24歳までの男性の失業者は、10.3パーセントにも達している。
労働省の定義によれば、「フリーター」とは、15歳から34歳までのパートやアルバイトをしている男女、ということになる。つまり、34歳をすぎると、もうフリーターとはよばれない。ただのパートかアルバイトである。女性の場合、フリーターといわれるのは、独身者のことで、主婦になると、パートのおばさん、である。
フリーターは、自分で就職せずに、気ままにはたらいて、自由を楽しんでいるようにみえるが、実際のところは、うまく就職できないための、浪人暮らしがすくなくない。それは失業率がたかくなると、フリーターが多くなることによっても、よく理解できる。正社員に登用されるかもしれないと思って、一生懸命はたらいたが、採用されなかった、というフリーターも多い。これはなどは、まちがいなく失業者の部類にはいるひとである。
(鎌田慧『現代社会100面相』による)
(注1) 気ままに:自分の思い通りに
(注2) 浪人暮らし:ここでは、失業中の状態
(注3) 正社員に登用する:正式な社員の地位に引き上げる
(注4) 採用する:雇う
問1 パートやアルバイトをしている人で「フリーター」とよばれるのは、次のうち、どのひとか。
1 25歳で結婚している男性
2 25歳で結婚している女性
3 40歳で独身の男性
4 40歳で独身の女性
問2「たいした社会問題にならない」とあるが、なぜか。
1 フリーターは失業者だと思われていないから
2 フリーターは労働者全体からみて数が少ないから
3 フリーターというよび名がまだあまり知られていないから
4 フリーターは自分の意志で自由を楽しんでいる人だから
問3 「これ」とあるが、何をさしているか。
1 自由を楽しんでいる浪人暮らしのフリーター
2 正社員になりたいのに採用されないフリーター
3 仕事があるのに自分で就職しないフリーター
4 一生懸命はたらいて、正社員に登用されたフリーター
[参考答案: 文章Ⅲ 問1(1) 問2(1) 問3(2)]